The Broad Wall (広壁)

訪問日: Feb 26, 2013

鶏鳴教会からシオン門を通ってカルドに向かう途中で、広壁(The Broad Wall)と呼ばれる古い城壁の遺跡を見に行きました。

途中の道端で、かわいい子供達と目が合いました。カメラを向けたらニコニコしてくれました。イスラエルの子供達は陽気です。

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The Broad Wall(広壁)と呼ばれる幅の広い城壁は、紀元前8世紀頃に、ユダ王国のヒゼキヤ王が造ったものと言われています。

「聖都エルサレム5000年の歴史(関谷定夫著)」には、

  • BC722年にアッシリアによって滅亡した北王国から多くの避難民がエルサレムになだれ込んできたため、エルサレムは彼らを収容するために拡張を余儀なくされ、テロピオンの谷をへだてた西側に、新しい居住区を新設した。
  • 同時に、ヒゼキヤ王は、アッシリアの侵攻に備えて、それまでの城壁を修理し、新設した居住区も城壁で囲んで要塞化した。

と書かれています。

この城壁は、幅が7メートルもあり、アッシリアがラキシュの攻略に使用した破壊槌戦車の攻撃にも耐え得るように頑丈に作られていました。

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この遺跡は、1967年にヘブライ大学のナフマン・アヴィガド教授によって発見されました。発掘された城壁は、長さが南北に65m、高さ3.5m、幅7mでした。

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横にある建物につけられた目盛りに、紀元前8世紀頃の地面の高さと壁の高さが示されていました。当時の高さは8mだったそうです。現在の地面は、左の公園の地面の高さですから、当時の地面より4m高いことが分かります。

壁の高さDSC_2712_R

この城壁は、ここで「くの字」型にカーブしています。この先はずーっと西へ伸びて現在のヤッフォ門のあたりまで行き、そこから南へ曲がって「下の町」も囲い込み、シロアムの池も城内に囲んでいました。ヒゼキヤのトンネルによって、城外にあったギホンの泉の水を、城内に取り込んでいたのです。下の地図によって、その位置関係が良く分かります。

広壁地図DSCN1648_R

アヴィガド教授によって、この壁は、ネヘミヤ記に出てくる「広壁」と同定されました。

”その次に、金細工人のハルハヤの子ウジエルが修理し、その次に、香料作りのひとりハナヌヤが修理した。こうして、彼らはエルサレムを、広い城壁のところまで修復した。” (ネヘミヤ記3:8)

城壁の下にもまだ石が並んでいるように見えます。この遺跡はそれ以前に建っていた家並みの遺構の上に建てられているとのことです。このことは、

”また、エルサレムの家を数え、その家をこわして城壁を補強し、” と書かれているイザヤ書22:10とも合致すると言われています。

イスラエルには遺跡が年代を追って積み重なって小高い丘になったテルと呼ばれる丘がたくさんありますが、エルサレムの町も4000年の間に、たくさんの時代の遺跡が積み重ねられた巨大なテルだと言えます。

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次の写真は発掘時の広壁です。発掘後、周囲にはビルや公園や商店街など、たくさんの建物が建てられてしまい大変残念です。 現在では、広壁のところだけがカルドーに接続する野外遺跡として公開されています。

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当時の強大な帝国であったアッシリアは、BC722年のサルゴン2世の時に北イスラエル王国を滅ぼしました。その後、BC701年になって、時のアッシリア王セナケリブはアッシリアの首都ニネベを出てユダ王国に攻め入り、要塞都市を次々に征服して最後にエルサレムを囲んで降伏を迫りました。アッシリアの残虐な攻撃は、ラキシュの攻略でよく分かります。ヒゼキヤ王は恐れをなしてセナケリブ王に莫大な銀を贈って和解を願いましたが、セナケリブは満足せず、無条件降伏を迫ってきました。

この時、預言者イザヤが次のように預言してそのとおりになり、エルサレムは救われました。

” それゆえ、アッシリヤの王について、主はこう仰せられる。彼はこの町に侵入しない。また、ここに矢を放たず、これに盾をもって迫らず、塁を築いてこれを攻めることもない。 彼はもと来た道から引き返し、この町には、はいらない。・・主の御告げだ・・ わたしはこの町を守って、これを救おう。わたしのために、わたしのしもべダビデのために。」 その夜、主の使いが出て行って、アッシリヤの陣営で、十八万五千人を打ち殺した。人々が翌朝早く起きて見ると、なんと、彼らはみな、死体となっていた。 アッシリヤの王セナケリブは立ち去り、帰ってニネベに住んだ。” (列王記第二19:32-36)

この奇跡の真相は分かりませんが、この戦いは、頑丈な広壁を造ったから大丈夫だったのではなくて、主である神の力によって救われたということですね。

Google MapのStreet Viewで、広壁(Broad Wall)のあたりの写真をみることができます。
下の地図を最大限に拡大し、左上の人形をクリックしたまま中央のマークのところに移動すると写真が現われますので、そのあたりを、行ったり来たり回転したりしてみると見つかります。

Google Mapは凄いですね! 日本にいながらエルサレム旅行を体験できます!
但し、時に重要な間違いがあるのでNaviとして使う時には要注意(体験的に断言できます)!!

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